特別公開!! 三条陸先生×芝田優作先生 獄炎対談①「過去」編

『勇者アバンと獄炎の魔王』第2部開始を記念し、Vジャンプ10月特大号にて掲載された三条陸先生×芝田優作先生の対談をWEBでも特別公開!今回は連載開始に至るまでの「過去」編を公開だ!

――まず、『勇者アバンと獄炎の魔王』の誕生の経緯について教えてください
三条陸(以下:三条):『ダイの大冒険』の再アニメ化とコミックス新装彩録版の発売ですね。それにあたって、Vジャンプや最強ジャンプで「できれば三条先生ご本人の原作で、描き下ろしの漫画を連載したい」というお話を頂いたんです。で、何をやろうかな…と。アニメで描かれる物語の後をいきなりやるというのは興ざめですし、連載に耐えうるキャラクターが必要になる。それで思い出したんですが、以前のアニメ化の際にも、アバンの読切作品をVジャンプに掲載していたんです。そこで、やっぱりVジャンプにはアバンが一番ふさわしいんじゃないかなと思ったんですよ。

――作画担当に芝田先生が決まった経緯は?
三条:アニメが100話、順調にいけば2年間かかるということだったので、長期連載に耐えうる力量がある人、というのが条件だったんですが、編集部さんの方で探していただいたんです。そうしたら「週刊少年ジャンプで連載していた芝田先生でどうでしょう?」と。一本釣りでしたね。芝田先生の作品は読んでいました。週刊連載すること自体がとんでもないパワーを必要とすることだし、絵も上手いなと思ったので。
芝田優作(以下:芝田):ギリギリまで漫画担当が見つからなかったみたいで、そこにちょうど連載が終わってちょっとがっかりしてた僕にチャンスが。連載直後ぐらいに連絡が来て、「『ダイ』のリブートプロジェクトみたいなの知ってるよね?」と言われて。「もちろん知ってますよ」と言ったら、「Vジャンプでアバン先生の漫画が始まるらしいんだけど、芝田さんに声がかかったんだけど興味ありますか?」って言われて。『ダイの大冒険』がめちゃくちゃ好きだったんで、「これはやるしかないなあ!」という感じでした。しかも三条先生に原作を書いていただけると聞いて、これはもうやりたい! 僕は三条作品で育ってきたので、こんなチャンス回ってくるんだって。二つ返事でやらせてくださいっていう形でした。もちろんプレッシャーはありましたけど、嬉しかったですね。

――連載の準備段階ではどのようなやり取りをされたんでしょう?
三条:そのころにはもう自分的にはプランがあって。過去に稲田先生作画でVジャンプに掲載した『勇者アバン』を、芝田先生版でリメイクして読者にもう一度読んでもらう。そこからスタートするのが一番良いんじゃないかって思ったんです。『ダイ』のファンにとっては読んだことがある話ですが、芝田先生が新たに描いたバージョンがあってもいいかなって。『勇者アバン』の当時の原作があったので、それを稲田さんにお渡しした時と同じように芝田先生にも読んでもらって、それをあらためてネームにするという作業をしてもらう。稲田先生が当時描いたネームという「最適解」があるから、答え合わせのようにチェックできれば、最初の手合わせでやりとりの感覚を覚えてもらえるんじゃないかなと。プラスして、当時にはなかった新たなキャラクター、ハドラーの部下達が最後に出てくれば、当時の『ダイ』ファンにとっても新鮮でしょうし。
芝田:原稿用紙の生の脚本のコピーをいただいて、「あ、すげえ!」みたいな感じでした。
三条:30年以上前のものです(笑)。当時は原稿用紙に手書きでしたね。


芝田:三条先生のねらい通りで、当時の原作を頂いて、一旦自分なりにネームを切ってみた後に稲田先生のものと比べてみるんですが、微妙に違和感があって…当時の担当編集ともやり取りしながら「ここが違うんじゃないか?」と研究して…本当に勉強になりました。初代の担当編集で、現在週刊少年ジャンプ編集長の齋藤さんも「稲田先生の作品の読みやすさはトップクラス。これはいい機会だから、会得しなよ」って言ってくれて試行錯誤を今も続けています。その最初の切っ掛けになった一番大きな経験が、この第1話でしたね。

――ほんとに修業みたいな感じだったんですね
芝田:そうなんですよ。三条先生に修業つけてもらったみたいな(笑)。

――キャラクターのデザインはどのようになさったのでしょう?
芝田:すでに稲田先生が描かれていたキャラクターに関しては、自分なりにちょっとだけ手を加えたという部分があります。当時の稲田先生が描かれてたアバンの感じって、ファミコン版の『ドラゴンクエスト』の、鳥山明先生が描かれたパッケージを踏襲していると思ったんです。ちょっとディフォルメされた可愛らしさのあるポップなイラストがベース。だから自分で描くなら、もうちょっとリアリティレベルは上げた方がいいだろうなと思ったんです。例えば舞台版『ドラゴンクエスト』の様に、装備のディテールを増やして立体感が出る様にデザインし直しました。それを元に連載開始前に予告カットを描いて、その際一緒にメインキャラクターの立ち絵デザインを作って、三条先生との初めての打ち合わせの時にチェックして頂いた感じですね。その最初の打ち合わせの時に、「実は第1話には続きがあって、こういうキャラが出てきます」と教えていただいて、まず「おお~!ブラスが!幹部だったんだ!」「バルトス!そうか、そりゃいるよなあ!」みたいな (笑)。読者の皆さんと同じ驚きだったと思います。あとはガンガディア、キギロ、そして驚かされたのは「影女」ですね。「レイラが実は…こんな感じです」と言われてビックリ(笑)。三条先生は絵もお描きになる方なので、ラフとしてのデザインはいただいたんですけど、「あまりとらわれずに、自由にデザインを膨らませてもらっていいですよ」と言っていただいたので、楽しく自分なりにアレンジさせていただきました。ガンガディアは眼鏡をかけたら面白いだろうな…とか、キギロは気取ってかっちりした貴族っぽい服を着せてみたりだとか。

――ガンガディアは、眼鏡をかけていなかったんですか?
芝田:かけていなかったですね。三条先生のラフだと、ちょっとしゅっとしたボストロールみたいな感じで、少し長めのこん棒が杖になっててみたいなところのアイデアはあったんですけど。
三条:ガンガディアは結構変化しましたよね。
芝田:そうですね、ガンガディアは僕の中で、闇金のウシのあの人とか、あと指パッチンのあの人とか…あの辺のイメージが入ると面白いなって思ったんですよ。プラス賢者や哲学者の様なキャラクターと聞いたので、古代ローマの哲学者の様な衣装、そして眼鏡とピアスですね。暴力的なインテリという感じになりました。

――レイラは『ダイ』からは想像がつかない、かっこいい女性になった印象ですね。
三条:既存のキャラの中で、『ダイ』ファンの中でも一番情報量が少ないのがレイラだったんですよね。衣装は『ドラゴンクエスト』らしい僧侶そのものだったし、そのまま描くと僧侶だから回復やサポートばかりしてるキャラになっちゃう。でもだからそこが一番イジリがいがあるなと思ったんです。アバン、ロカ、レイラ、マトリフが並んだ時に、一番「誰?」ってなるキャラをレイラにしようと決めたんです。「影女…誰!?」って(笑)。

――「影女」はダイ発明だと思いました!
三条:鳥山先生が描いた僧侶のデザインが、タイツ地の上に法衣をまとってるんですよね。だから、法衣を脱いだらタイツになるっていうのはどうかなと思って。
芝田:それを聞いて、「それはスゴイ!なにより…ちょっとエロい!」と思いました(笑)。
三条:脱いだらタイツだけになって、その分素早くなったり強くなったりするのはどうだろう?というのを思いついたんですよ。

――この続きの「現在」編は11月18日(月)公開予定!

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